Payroll

アメリカ Payroll Tax (給与税)

従業員を雇い始めました。給与は月3000ドルです。では給料日に3000ドルを払えばそれでよいのか。これが自分の従業員ではなく、外部の契約社員 (Independent Contractor) に対する支払いであればその通りです。しかし、自社の従業員となると事はそんなに単純ではありません。今回は自社の従業員として雇用した場合の雇用主側の税務処理について解説していきます。

グロスの給与を決めました!他にすることは?

従業員に給与する場合、雇用主の責任として、以下の項目を源泉徴収する必要があります。

– Federal Income Tax

– State Income Tax

– Local Income Tax

– Social Security Tax

– Medicare Tax

– SDI (State Disability Insurance)

– FLI (Family Leave Insurance)

 

それぞれの内容については「アメリカの給与明細解説」にて解説しておりますので、こちらをご参照ください。

源泉徴収したものはどうすればいいの?

源泉徴収とは、個人に代わって、給与や報酬などの支払いを行う者が関係する税金を差し引いて納税する制度のことです。当然ながら、従業員から源泉徴収した税金は納税しなければならず、会社がもらうことはできません。それでは、源泉徴収した上記の各項目は「いつ」、「誰に」、「どのように」納税するのか、以下で項目別に解説していきます。

源泉徴収税は「誰に」払うの?

源泉徴収の納税について理解するためには、まずそれぞれの項目が誰によって課されているのかを理解する必要があります。税金は法律によって定められ、徴収されます。その法律を作っているのは国(連邦)と州です。従い、まずは源泉徴収されたそれぞれの税金が連邦と州どちらに帰属するものなのかを整理しましょう。但し、SDI及びFLIは州の法律により加入を義務付けられている保険なので、支払いは保険会社宛てになります。

 

・連邦に支払う源泉徴収項目

―Federal Income Tax

―Social Security Tax

―Medicare Tax

 

・州に支払う源泉徴収項目

―State Income Tax

―Local Income Tax

 

・保険会社に支払う源泉徴収項目

―SDI (State Disability Insurance)

―FLI (Family Leave Insurance)

 

源泉徴収税は「いつ」払うの?

Federal Income Tax、Social Security Tax、Medicare Taxはいずれも連邦に対して納める源泉徴収項目です。従い、これらを納税するタイミングはすべて一緒になります。では、いつ支払うのか。連邦に対する源泉徴収税の支払時期は” Lookback Period” における源泉徴収額によって決まります。Lookback Periodとは、2018年の場合は2016年の7月1日から2017年の6月30日までの期間を指します。この期間の源泉徴収額がUSD 50,000より多かった場合は月に2回、USD 50,000以下であった場合は月に1回の支払となります。給与を月に何回支払っているかは関係ありません。なお、新しい会社は前年のレコードがないため原則月に1回の支払になります。

月1回の支払の場合、毎月15日までに前月の源泉徴収額を納税します。

月に2回の場合、給与に支給日が水曜日、木曜日又は金曜日の場合、次の週の水曜日、給与の支給日が土曜日、日曜日、月曜日又は火曜日の場合、次の金曜日までに納税を行う必要があります。

 

州に対して支払う項目は、州法によって規定されています。従い、具体的には各州のホームページ等を参照する必要があります。ここでは、一例としてニューヨーク州の支払期限についてご紹介します。

ニューヨーク州へ支払うState Income Tax及びLocal Income Taxの源泉徴収税の納付期限は、連邦の納付期限よりも厳しくなっています。前年度の州税の源泉徴収額合計が$15,000以上の雇用主は、給与の支払い日から3日以内、前年度の州税の源泉徴収額合計が$15,000より小さい雇用主は、給与の支払い日から5日以内が納付期限となっています。

 

連邦にせよ州にせよ、源泉徴収した額は速やかに納税することを心がけることが大切です。納付期限に遅れるとペナルティーと利息が発生致します。

 

State Disability InsuranceとFamily Leave Insuranceは民間の保険会社との保険契約ですので、保険会社から請求書が来たタイミングで支払うことになります。

源泉徴収税は「どうやって」払うの?

Federal Income Tax、Social Security Tax、Medicare Taxは、連邦に対する支払いですので、EFTPS (Electric Federal Tax Payment System) を使用して支払いを行います。また、四半期に一度Form 941[kk1] をファイルする必要があります。

州への支払は各州により異なるためそれぞれのweb siteを確認する必要があります。ニューヨーク州は、ニューヨーク州のweb siteに登録後ログインし、NYS-1というフォームを選択して支払い手続きを行います。また、四半期に一度、サマリーの報告及びUnemployment Insuranceの支払いを合わせてNYS-45を提出する必要があります。

源泉徴収項目以外で雇用主の負担しなければならない項目は?

Payrollに関する雇用主の義務は、従業員の給与から源泉徴収を行って政府に代わりに納税することだけではありません。雇用主として負担しなければならない、以下のような税金が存在します。雇用主としての責務ですので、それぞれきちんと理解致しましょう。

―Employer Social Security Tax

―Employer Medicare Tax

―Federal Unemployment Tax

―State Unemployment Tax

 

Employer Social Security Tax及びEmployer Medicare Taxは、厚生年金保険のようなもので雇用主と従業員で半分ずつの負担となっております。従業員の給与から源泉徴収した分と雇用主負担の分を合わせて、Form 941を用いて申告及び納税を行います。

 

Unemployment Taxに関しては、別の記事で詳細解説しておりますので、そちらをご参照ください。

監修者

小林 賢介

早稲田大学政治経済学部を卒業後、 有限責任監査法人トーマツのグローバルサービスグループ部門に入所。 2015年8月よりDeloitte NYに駐在。 その後、ニューヨークにて UNIVIS AMERICA LLC(Univis US)を立ち上げ、同所長に就任。